2025年12月12日金曜日

第3948話 ほぼ初めての箱根旅 (その2)

夕食後は部屋に戻り、
飲み直しと来たもんだ。
新宿小田急で買ったワインは
白がチリのシャルドネ。
赤はイタリアのネッビオーロ。
ともに水準をクリアしている。

つまみも東口改札そば、
J.C.御用達の小さなビヤカフェ、
「ベルク」で調達した。
膨大な量の夕食は先刻承知。
よって殻付きアーモンドや
ドライフルーツ、軽い物ばかり。

一夜明けて朝食。
何だって温泉場の宿は
朝からこんなに出すんだろう。
小あじの開きは好かったが
あとはバカバカしくて
披露する気にもなれやしない。
冗談じゃないぜ、ったく。

登山電車を強羅で
ロープウェイに乗り換え、
大涌谷に昇った。
谷から湧き出る湯けむりと
目の前にそびえる富士山。
箱根の醍醐味は此処なんだネ。

さっきと異なるルートを
降ってゆくロープウェイで
芦ノ湖湖畔にやって来た。
海でもないのに海賊船に乗り、
元箱根に入港した。
そのままバスで箱根湯本へ。

遅い昼めしを「湯葉丼  直吉」で
一同取ろうとするも
此処のビールはエビスのみ。
軍団を置き去りにし、
独り踵を返して歩く湯本の町。

蔦のからまるチャペルならぬ、
喫茶店に遭遇した。
「画廊喫茶 ユトリロ」は
なかなかに趣きがあり、
天井にはファンが回っていた。

マスター手作りのカレーが
名物らしくドライ中瓶と通す。
スパイス・ニンニク・生姜を
効かせてるらしいが
ごくフツーの喫茶店カレー。
まあ、こんなものでしょう。

「直吉」に引き返したら
美女3人はまだ食事の真っ最中。
湯葉刺し、姫どうふ、湯葉丼。
おすそ分けにあずかりながら
ひょいと見たら卓上に黒ラベル。
何だよぉ、これなら別行動を
取った意味がないじゃん。
遅ればせながら1本飲んだ。

湯本駅改札前のみやげ物屋で
缶ビールとつまみを調え、
北千住行きの特急に
乗り込んだのでした。

箱根発北千住行きって
世の中もう壊れちゃってますネ。
旅情のかけらすらありゃしない。

「画廊喫茶 ユトリロ」
 神奈川県足柄下郡箱根町湯本692
 0460-85-7881

「湯葉丼 直吉」
 神奈川県足柄下郡箱根町湯本696
 0460-85-5148

2025年12月11日木曜日

第3947話 ほぼ初めての箱根旅 (その1)

またもや旅である。
まっ、近場の箱根だけどネ。
揃った面子は先日、
日本橋茅場町のビストロに
集結した美女軍団3人組だ。

♀3人 vs ♂1人の旅行は
さすがに人生初である。
掃き溜めに鶴ならぬ、
お花畑に亀の再現と相成った。
どうなることやら?

実は J.C.、箱根は2度目ながら
ほとんどまったく知らない。
あれは48年前の夏。
当時勤めていた日比谷の免税店。
その社員旅行で行ったはいいが
山奥の旅館に投宿後すぐに
熱海の手前、伊豆山へ出掛けた。

漁師の方に小舟を出してもらい、
日がな海釣りと来たもんだ。
みんなしてカサゴを何匹も
釣り上げたが J.C.はたった1尾。
コレがわが人生唯一、
最初で最後の釣果である。

宿でカサゴを煮て貰い、
飲み食いを満喫した後、
ふもとのスナックで飲み直し。
人生初めてのカラオケだった。
1977年はカラオケ元年。
裕次郎の「嵐を呼ぶ男」を
歌った記憶がある。

さて、新宿から1時間半。
車中でビールを酌み交わし、
和気あいあいの旅の始まり。
箱根湯本から登山電車で
塔ノ沢手前の宿に到着した。

18時からの夕飯は
”師走の御献立”と称し、
贅を尽くして豪華絢爛。
内容を紹介したらば
一話全てを要するため、
概要だけを記しておく。

食前酒ー梅酒
前菜ー箱根湯葉
   牛ロース卸し和え
   S・サーモン キャビア添え
御椀ー煎り米煮だし
造りー真鯛・本鮪
焼き物ー銀鱈粕西京漬け
煮物ー飛龍頭八方煮
鍋ー石狩鍋
揚げ物ー椎茸アーモンド揚げ
食事ーきの子御飯
   なめこ赤出汁 千枚蕪
デザートー苺メレンゲ

実際はこの1.5倍あった。
こんな食事を目の前にすると
つくづく人間の罪深さを
感じずにはいられない。
神よ、許し給え!

=つづく=

2025年12月10日水曜日

第3946話 勘違いの効用

先日の愚かなる勘違い。
ブログ終了の告知のことである。
でもネ、人間万事塞翁が馬。
おかげで多くのニューともを
得ることが出来たのだった。

勘違いの効用はまさに怪我の功名。
災い転じて福となる。
その第一号となったのが
兵庫県・西宮市在住の K藤サン。
奇しくも J.C.と同い年である。

上野アメ横の「かのや本店」で
13時に待ち合わせた。
ドライ大瓶を注ぎ合って乾杯。
実はメールのやり取りで
判明したことに
彼のご妻女はN子サン。
J.C.が妻籠宿で知り合った、
ニュー友・N子と同名なのだ。

まっ、それはそれとして
「かのや」ではそれぞれ、
大瓶を3本づつ飲んだかな?
彼もまたビール党だった。
つまみは生海苔豆腐、
カニクリームコロッケ、
海老マカロニグラタン。

2軒目は御徒町の「味の笛」。
15時の開店と同時に入店した。
ドライの生中で2回目の乾杯。
相方は鶏レバーうま煮を
つまんでいる。
これなら日本酒だろうと
新潟は阿賀町津川の銘酒、
麒麟山の冷たいのをー。

きっかり1時間つぶし、
16時開店の「岩手屋本店」に移動。
サッポロ赤星で3回目のカチン。
つまみは好物のばくらいだ。

あと生物をつまんだ記憶があるが
それが何だったかは
アウト・オブ・メモリー。
相方にはハーモニカを
すすめてやった。
めかじき背身の煮付けだ。

其処から谷中よみせ通りの
マイ・ホーム・グラウンド、
「グランプリ」に流れ、
1曲づつマイクを握った。

酔っ払い2人の到来に
ママはモロにイヤな顔。
ビールの追加注文を拒否され、
温厚な J.C.もさすがに
堪忍袋の緒がプッツン。

「もう来ないヨ!」
「いいわヨ!」
「ケッ!」
!マーク三連発と来たもんだ。

けれども1週後にはスーさんを
連れて来なけりゃならんし、
どしたらよかんべサ?
誰か教えて!

「居酒屋 かのや 上野本店」
 東京都台東区上野6-9-14
 03-5812-7710

「味の笛」
 東京都台東区上野5-27-5
 03-3837-5828

「岩手屋本店」
 東京都文京区湯島3-38-8
 03-3836-9588

「グランプリ」
 東京都台東区谷中3-13-10
 033821-6376

2025年12月9日火曜日

第3945話 いきなりの松山千春

この日は明るいうちから
御徒町でウロウロうろうろ。
昼飲み処を見つけるのに
苦労していた。

ああでもない、こうでもない、
挙句に飛び込んだのが
「祭家 夢吉」なる居酒屋。
店先を何度も通ってはいたが
気に留めたことすらない店だ。

何のこたあない、
ビールが飲めればそれでいい。
ただそう思って
飛び込んだ次第なり。

時刻は13時半。
それなりの客入りではある。
平日のこの時間なのに
カップルが目立つ。

ドライ中瓶を飲みつつ、
豊富な品書きをながめる。
ん? コレは珍しいな。
鳥ささみの昆布〆と来たもんだ。

通したものの、ちょいと不出来。
とは云え、不味いわけでもなく、
それなりにビールの友になった。

2本目とともに
豚バラ串焼きを追注したとき、
さっきまでまったく、
気づかなかったBGMに耳が反応。
エッ? 松山千春じゃないかー。

いきなりの歌声は
「人生(たび)の空から」。
マイ・フェイヴァリットじゃ
ござんせんかー。

♪ 深く耳をすませば
  朝一番の汽笛
  街はにわかにざわめいて
  遠い旅の空から
  君に送る便りは
  力まかせのなぐり書き
  まわり道でも旅の終わりに
  君にもう一度
  会えたならいいね  ♪

てなこって
千春のマイ・ベスト5。

① 時のいたずら
② 人生の空から
③ 銀の雨
④ 窓
⑤ ピエロ

「人生の終わりに」が
いきなりかかった以上、
鳥も豚もどうでも
よくなったのでした。

「祭家 夢吉」
 東京都文京区湯島3-40-7
 03-6284-4081

2025年12月8日月曜日

第3944話 5年放置の「喜常寿司」(その2)

スーさんからのメールは
並の呑ン兵衛より
五月蠅いという自己申告。
下手な店には連れて行けない。
”酒の肴は詳しい” と
いうくらいだから
これは ”和漢洋” の ”和” で
いくしかあるまいな。

さすれば豊富な酒肴の揃う、
鮨屋が望ましいものの、
歌合戦戦場の近くには
コレといった鮨屋がござらん。

昼から食って歌うつもりだが
夜のみ営業が数軒あるばかり。
昼開ける店も1軒あったものの、
ビールがエビスのみの惨状。
よって「喜常寿司」に
白羽の矢を立てたわけだ。

いくら何でも
大事な客人を伴うのに
ぶっつけ本番はないやろ!
よって下見に訪れた次第なり。

つけ台のほぼ中央に促され、
さっそく赤星中瓶を
トクトクのクイ~ッ!
生きる歓びを実感する。

当店のランチタイムは
喜常ミニ丼セットの独壇場。
16種もある小どんぶりから
3種択ぶことができ、
味噌椀・デザートが付いて
希望すればいなりずしまで
サービスされるというもの。

「喜常」の由来は常にお客様を
喜ばせることかららしいが
いなり(きつね)の存在も
その理由に一役買うのだろう。

今日は下見につき、お好みでー。
まずはつまみにせいこ蟹をー。
ずわいのメスである。
これには生酢を所望した。

にぎりに移行する。
平目昆布〆・肝付きかわはぎ・
小肌・しゃこ・ぼら白子・
やいとがつおの6カン。
やいとはすまがつおの別称だ。

最初の昆布〆が
混ぜわさびで来たため、
おろし立ての本わさだけでと
わがままを言わせてもらった。

絶賛とはいかないまでも
押し並べて水準は高い。
これなら客人を
満足させることが出来そうだ。

信州・大町の銘酒、
りゅうすいせん。
その冷酒を1合半いただき、
お勘定は金8900円也。
ごちそうさまでした。

「喜常寿司」
 東京都文京区千駄木3-32-11
 03-5809-0174

2025年12月5日金曜日

第3943話 5年放置の「喜常寿司」(その1)

メトロ千代田線・千駄木駅から
徒歩30秒の至近に
「喜常寿司」が開店したのは
2020年5月だった。
あのコロ助が猛威を
振るい出した頃である。

当店は自宅のそばどころか、
住所が一緒なのだ。
それもそのはず、わが家は
鮨屋の階上だったからネ。
つい4ヶ月前まではー。

多くの店がコロのせいで
閉店の危機に見舞われたのに
果敢にもその時期の開業とは
ガッツのある店主だと
感心して見ていた。

早いものであれから5年半。
1度も訪れることが無かった。
灯台下暗しとはまさにこのこと。
一念発起して暖簾を潜る。

実は先日。
珍しい人からメールが届いた。
かつての雀友・スーさんだ。
これもすべては
J.C. の勘違いのせい、
いや、おかげである。

goo と Google を勝手に
取り違えてブログの終了を
アナウンスしたところ、
多くの方からレンラクをいただき、
その縁で12月は何人かの読者と
初めてお逢いすることになった。

逢えば当然、一献傾けることにー。
スーさんもそのお一人なのだ。
初対面ではなく旧知の仲だがネ。
「歌で勝負したい!」
そのご意向に
「受けて立ちましょ」
再会することとなる。

舞台は J.C.の地元の谷根千。
なじみの「グランプリ」だが
腹が減っては戦が出来ぬ、
決戦の前に何処か、
適当な店がないものか?
思案の末にブチ当たったのが
「喜常寿司」というワケだ。

スーさんは下戸である。
一滴も飲まない。
でも、ご本人曰く、

私も博識を自負するが 
例えば 下戸でも
どんな呑んべいより 
酒の肴は詳しいと思ってる
しかしJCには敵わず 
随分 参考になった

=つづく=

2025年12月4日木曜日

第3942話 鹿児島の 海から揚がった 青ちびき

町中華「かさま」をあとにして
悠々と往く旧中山道・仲宿。
スーパー「ライフ」には
買いたい物が無くスルー。

「セーヌ」の鮮魚売り場で
珍しいサカナを見つけた。
青ちびきは辛うじて
名前を聞いたことがあるが
姿かたちをイメージ出来ない。

初めてのサカナに出逢えば
必ず買うことにしている。
皮を剥かれたサク状カット。
ちょっと見は黒鯛に似ている。
水揚げは鹿児島県だ。

10パックは並んでいたろうか、
一律500円だった。
何個かパックの右端をつかみ、
空中で軽く3~4回振ってみる。
重量を計るためにネ。
ずいぶん差があるな。
結局、一番重いのではなく、
一番見映えのよいのを買った。

帰宅後、様々なことが判明した。
図鑑を見るとスズキに似ている。
ただし、尾びれがより立派。
背びれも二段構えのスズキに比べ、
1枚がス~ッと延びている。

食味の評価はほとんど最高。
調理法も刺身はもとより、
塩焼き・煮付け・唐揚げ・
ソテー・ムニエルと多種多彩。
どうせなら2~3パック、
買えばよかった。

切歯扼腕、腕まくりして
スックと厨房に立つ。
まずは刺身に下ろす。
小片が2つ残った。

1つは生醤油&清酒を
同割りにしてヅケにした。
これはしばらく置いて
つけ焼きにする。
もう1つは塩・胡椒でバタ焼きだ。

まことに美味でありました。
繊細にして緻密。
コク味もじゅうぶん。
知名度の低さからか、
値付けが不当に低評価で
そのぶん消費者は
恩恵にあずかることが出来る。

スズキはフレンチで
ルー・ド・メール(海の狼)。
イタリアンならブランツィーノ、
あるいはスピゴラ。

仏人・伊人の大好物だ。
もしも彼らに青ちびきを
食わせることが出来たなら
欣喜雀躍すること請け合いです。

「SainE(セーヌ)よしや」
 東京都板橋区仲宿43-6
 03-3962-1591