2025年10月1日水曜日

第3896話 北千住 馴染みの店が もう1軒

来ることの多い北千住を
この日も訪れた。
所用を済ませ、昼飲みのお時間。
ホームグラウンドの「幸楽」に
向かいながら思いとどまる。
たまにはヨソに行こう。

存在を知っていたが未訪だった、
「千住 845」の敷居を跨いだ。
コの字カウンターの両サイドに
テーブル席が配置され、
かなりの大箱である。
コの字に着き、ドライ大瓶をー。

つまみを慎重に吟味する。
朝食が遅かったため、
飲みものは普通にノドを通るが
食べものはストマックの許容量に
限界が生じている。

白羽の矢を立てたのは
馬肉赤身カルパッチョ。
するとコレが予想を上回る逸品。
薄切り馬刺しの上に
クレソン・ラディッキオ・
もってのほか(食用菊)が敷かれ、
上にたっぷりのパルミジャーノ。
イタリアン顔負けの出来映えで
食味も申し分なし。
冷えた菊正の樽酒に切り替えた。

数日後に再訪し、大瓶とともに
おすすめボードの一番目にあった、
秋刀魚刺しの発注に及ぶ。
すると今回もまた予想を上回り、
前回同様、舌鼓をポンポン。

生モノをもう一品いっとこう。
赤貝は切れていたが
ヒモなら用意できると云うので
ソレをお願いする。
こちらは秋刀魚ほどではなく、
まずまずの品質だった。

菊正の樽にスイッチし、
穴子の天ぷらを追注。
水準をクリアして
天つゆの塩梅も好い。

北千住の街に来れば
ほとんど「幸楽」一辺倒。
そこに強力なライバルが出現し、
今後はあっちに行ったり、
こっちに来たりが可能だ。
いずれにしろ馴染みの店が
1軒増えたことは誠に歓ばしい。

「酒と魚 千住 845(ハシゴ)」
 東京都足立区千住2-39
 050-5594-0528

2025年9月30日火曜日

第3895話 日暮れの里の リトル・ミャンマー

自宅最寄りのJR駅は日暮里。
此処はその昔、
日暮れの里と呼ばれていた。

駅に隣接する、
ステーション・ポートタワーに
ミャンマー料理店「門」が
開業したのはこの春のこと。
ラーメン店の居抜きである。

或る日、フラリと立ち寄った。
10人も入れば満員で
入口の券売機に向かうと
「ソレ今、使ってません!」
前の店の置き土産がそのまんま。
客は全員ミャンマー人で
邦人はわれ独りの完全アウェーだ。

カウンターの隅に着いて
ドライのレギュラー缶をお願い。
写真入りのメニューを眺めると
モヒンガー(魚出汁麺)と
クイッティアオ(米粉)は
理解できたがあとは皆目判らず。
クイッティアオの汁有りを通す。

叉焼麺と見紛うばかりに
厚切りの叉焼が4枚も。
あとは魚団子と半玉に空心菜、
おでんの大根みたいなのと
揚げ玉ねぎに砕いたピーナッツ、
そしてトップにはパクチーが。
食べ出があって味も好い。
すかさず缶ビールのお替わり。

隣りのミャンマー娘の料理に
興味が湧いて訊ねたら
メニューを指し示してくれて
モーラミャインアトッソン。
何のことやらサッパリ判らない。

「美味しいヨ」ー
野菜炒めみたいなのを指さし、
彼女がニッコリほほ笑んだ。
彼女はソレをおかずに
大盛りライスをもりもり。

翌週、再訪する。
この日もミャンマー人一色。
此処は日暮れの里に生じた、
リトル・ミャンマーである。

ドライの缶とソレを
オカズ&ライスともに半量で通す。
温かい炒め物と思った料理は
冷製の和え物だった。

具材は、油揚げ・米粉・もやし・
きゅうり・砕きピーナッツ。
辛味の効いたタレで和えてある。
うむ、うむ、イケるじゃないか。
半量でも多いくらいだが
もやしとカブと揚げ玉ねぎの
スープとともに完食した。

2缶飲んで会計は1800円。
次回は真鯛の出汁の
モヒンガーを試すつもりです。

「アジアン フード 門」
 東京都荒川区西日暮里2-20-1
 ステーション・ポートタワー
 070-8987-0287

2025年9月29日月曜日

第3894話 彼と彼女が 逝きました

今月11日のこと。 
中が良いのか悪いのか、
喧嘩の絶えない兄弟デュオ、
ビリー・バンバンの兄、
菅原孝が肺炎で亡くなった。

彼らのナンバーはデビュー曲、
「白いブランコ」や坂本冬美の
カバーで再ブレークした、
「また君に恋してる」より
「さよならをするために」、
この1曲がすべての J.C.である。

今でも忘れられない1972年夏。
年上の恋人・M子の住まいが
千葉県・市川市郊外にあり、
純真な青年は足繁く通った。

田んぼの中の一軒家で
蛙がゲコゲコ夜通し鳴いていた。
日曜の朝「さよならを~」が
ラジオから流れて
初めて聴く曲に胸が震えた。

翌年、旅先のナイロビから
空路ロンドンに入り、
金欠病に見舞われて働き始めたが
職場のレストランでBGMに
「さよならを~」を掛けたところ、
同僚のスペイン人、カナリア出身の
ミゲル・ゴンザレス・ロドリゲスが
ビューティフル・ソングと
痛く気に入って毎日、
リクエストするようになった。
忘れ得ぬ思い出である。

先週23日にはわが愛しの女優、
クラウディア・カルディナーレが
この世を去った。
彼女の主演映画で
大の気に入りは「ブーベの恋人」。

C・ルスティケリのテーマ曲も
強く印象に残っている。
日本語版はザ・ピーナッツと
いしだあゆみの競作となり、
それぞれにヒットした。

J.C.が観て来た映画の中では
「ブーベの~」の彼女が一番好き。
三白眼の上目遣いと
薄い上唇の下の厚い下唇。
あんな女(ひと)を恋人にしたい、
そう思ったものの、
いまだに実現していない。

この際、いい機会だから
2位と3位も公表しよう。
「シャレード」のヘプバーン。
「めまい」のキム・ノヴァク。
この二人でキマリです。

2025年9月26日金曜日

第3893話 独り宴の客となる

早稲田行きのバスを
上富士前で降りる。
メトロ南北線・駒込駅に向かい、
歩き始めたらいきなりの雨。
バスを降りたら雨が降り出した。

豪雨じゃないけど傘は必要な雨足。
テイク・ア・シェルター・
フロム・ザ・レイン の一手だ。
予備知識もないまま、
アチラ系中華に飛び込む。

「宴客」とはまた奇妙な店名。
屋号に ”客” をあしらう店を
他に知らない。
まっ、いいけどサ。

ドライ中瓶に皮付きピーナッツ。
中華特有のものだが小粒で旨い。
五目そばの麺を半分にして貰い、
半炒飯とともに通した。
ともにまずまずの仕上がりだ。

中瓶をお替わりして菜譜に見入る。
晩酌セット(1300円)がいいネ。
A.飲み物  B.料理  C.点心
1品づつ択ぶことができる。

翌週、舞い戻った。
瓶ビールはセットの対象外につき、
同じアサヒの中ジョッキと八宝菜、
小籠包のトリオでお願いした。

中生は1分で飲み干し、
すかさず中瓶に切り替える。
泡の量を自分で調節可能な瓶は
J.C.のビール愛をしっかりと
受け止めてくれる。

八宝菜がとても好い。
小海老・イカ・帆立・豚バラ・
うず玉・キクラゲに
野菜もいろいろ入り、
ヤングコーンやフクロ茸までも。
上品な薄味に奥行きを感じた。

小籠包もまた好く、
飛鳥山の行きつけに肩を並べる。
中瓶をお替わりしたあと、
甕出し紹興酒にスイッチした。

「宴客」にて独り宴の客となり、
秋の夜長を存分に楽しむ。
白玉の歯にしみとほる秋の夜の
酒は独りで飲むべかりけり

若山牧水の名歌をちょいと
アレンジさせていただきました。

「宴客 駒込店」
 東京都豊島区駒込2-7-6
 03-3949-6959

2025年9月25日木曜日

第3892話 プランツォは ニョッキだけ

何かと出掛ける機会の多い、
神田神保町である。
この町のことはすべて
知り尽くしたつもりだが
つい先日、今まで
気づかなかった店に出逢った。

「Chat Gatto」は不思議な店名。
"chat" は仏語で猫。
"gatto" は伊語でやはり猫。
猫好きの J.C.は理解できたが
”猫々”って何じゃらほい?
仏料理・伊料理の枠にとらわれず、
伸び伸びと料理する、
そんな意味を持つらしい。

しかもこの店が変わっているのは
水・木・金と3日間限定の
プランツォ(昼食)が
ニョッキだけなのだ。

その日は2種のソースから。
鶏としいたけのトマト煮込み
しらすセロリのガーリックバター
しらす(チチェニエッリ)を
お願いしてみた。

さて、ビール。
瓶は最も苦手なエビスのみ。
生はちと理解に苦しむのが
壁に貼られていた。
本日の生ビール 1杯1000円
柚子のばかたれエールのラガー版
「ばかたれラガー」

ほとんど意味不明ながら
エビスよりマシだろうと
発注に及んだものの、
結論から云ってしまえば失敗の巻。
不味くはないけど美味くもない。
それにたかだか250ccで
1000円はないだろう。

野菜たっぷりのスープと
天然酵母パンがサーヴされ、
これは好かった。
でもネ、しらすがデカい。
育ち過ぎている。
ニョッキも12個は多く、
食べ切れなかった。

夢破れて山河あり。
障子破れて・・・
おっと、これは昨日も書きました。

「Chat Gatto(シャガット)」
 東京都千代田区神田神保町1-54-19
 03-5281-8660

2025年9月24日水曜日

第3891話 松風騒ぐ 根津の町

この日の昼もまた文京区・根津。
「蕎麦 松風」を初めて訪れた。
♪ 松風騒ぐ 丘の上 
  古城よ独り 何偲ぶ ♪
三橋美智也の歌声が
聴こえてきたけど浪花の小姑が
ぶつぶつ云うのでやめとく。

毎日のように正午には
数人の列ができ、
彼らの肩越しに中をのぞくと
席数は15席あるかないか、
小さな店である。

ビールはキリンラガーの生のみ。
まずは通して品書きの吟味だ。
わさび茎醤油漬けを見つけ、
笑みをもらして即注に及ぶ。

この一品が優れモノ。
立派な茎だから
本体のわさびは五年物、
いや、七年物かも知れない。

板わさも行っちゃおう。
鈴廣か籠清と推察される、
良質なかまぼこに
おろし立てがタップリ。
結構な量のわさび漬けも
添えられていた。

生は2杯目、すぐ3杯目。
わさ茎も板わさもまだ残っている。
山形の銘酒・鯉川を冷たいので
お願いすると常温だけだという。
いいでしょう、いただきましょう。

締めそばはすでに決めてあった。
ピンク・グレープフルーツの
冷やかけというヤツだ。
どんなのが出て来るのか
興味津々もいいところ。

でもネ、見てみてガッカリ。
ピンクというよりルビーが
半月形にスライスされ、
10片もそばに乗って来た。
夏によく見るすだちそばの
グレープフルーツ版だ。

夢破れて山河あり。
障子破れてサンがあり。
もりそばにしとけばよかった。
細打ちのそば自体はいいので
許す、赦す、J.C.はユルす。
お勘定は6300円でした。

「蕎麦 松風」
 東京都文京区根津2-37-12
 03-6882-0842

2025年9月23日火曜日

第3890話 黒・白重に 目が白黒

文京区役所で所用を済ませ、
ちょいと早いが昼めしのお時間。
東京ドームの脇をすり抜け、
水道橋にやって来た。

JR総武線・水道橋駅にほど近く、
1軒の鰻屋の店先で足が停まる。
此処は千代田区・神田三崎町。
「うな重」と書いて
「UNASHIGE」と読ませる。

店頭にパネルが2台。
苦手な J.C.がとまどってると
中からスタッフの女性現る。
アジア系でミャンマーかな?
こうなったらもう逃げられない。
今日のランチは此処でキマリだ。

品書きは明瞭にして単純。
蒲焼きの乗った重箱が黒重。
白焼きになると白重。
それぞれ並・大・特大があり、
1200円・1700円・2200円は
うなぎのサイズによるもの。

彼女の助けを借りながら
並の黒重とハイネケン小瓶を購入。
卓上の大根醤油漬けをアテに
オランダビールを飲みつつ待つ。

10分ほどで調い、
カウンターに出向いて受けとる。
吸い物は自分で作った。
永谷園の茶漬けみたいな粉末に
ポットの熱湯を注ぐ。

いや、予想以上の美味しさに
正直驚いてしまった。
よくこの値段で
こんなうなぎが出せるものだ。

翌週舞い戻り、白重を試す。
こちらもなかなかだったが
白焼きだけでは
ごはんのおかずに成りにくい。

蒲焼のタレと異なるのは
自明の理ながら
何かもう一工夫ほしい。
酒のつまみにはよかろうが
酒類はビールの小瓶だけだ。

黒重&白重を食べ比べ、
驚きの廉価に
目を白黒させたものの、
今のままだと黒重がオススメ。

安いうなぎ屋なら
近頃、もの凄い勢いで全国に
繁殖する「鰻の成瀬」より、
「UNASHIGE」を格上に
ランク付けしました。
一度食べてみて下さい。

「UNASHIGE 水道橋本店」
 東京都千代田区神田三崎町2-8-10
 03-6268-9303